【簡易レビュー】Sennheiser IE600 質実剛健ながらつまらなさを感じさせない逸品
どうも。
今回はこちらのイヤホンをレビューしていきたいと思います。
Sennheiser IE600
こちら友人の所有機をお借りしてのレビューになります。友人とヘッドフォン祭に行った帰り、かねてから欲しい、気になると言っていたIE600。店頭で試聴したが最後、数日後には彼の手元に収まっていたのでした。今回はそんなイヤホンの音質を見ていきます。
それでは本題に入っていきましょう。
【スペック】
- ドライバー構成:ダイナミックドライバ1基
- インピーダンス:18Ω
- 周波数特性:4~46.5kHz
- 感度:118dB(1kHz,1Vrms)
- ケーブル長:125cm
【使用感】
- 感度:省略
- フィット感:小振りな筐体で耳への収まりはとても良いです。ただ耳に接する側のハウジング形状が筐体の薄さから密着感・ギチッとした密閉感は弱目でイヤピと耳甲介が接する部分以外は僅かに浮いてしまっている様に感じました。Westoneの過去のユニバーサルやShureのSE846の様な筐体の丸みが無いという事ですね。
- ケーブル:ゴムの様な弾力があり若干癖は付きやすい様に感じました。劣化によってベタつきが発生しそうで少々心配です。イヤーフック部分は針金で固定するタイプで浮きやすいのでフック状の皮膜のみにしてくれた方が個人的には好みです。イヤホン筐体が軽量なのでフックが硬いと装着感に悪影響があるのでちょっと難点です。自分なら他社製ケーブルにするかも知れません。
- メンテ:省略
- その他:アモルファスジルコニウム素材を使用した筐体は質感がとても良くいぶし銀の輝きを放っています。金属製かつIE900より重いと聞いていたので重量もあるかと思いましたが手に取ると非常に軽量で装着する時に逆に心もとなさを感じる程です。
【音質について】
【低域】
DDらしく芯がありつつも圧迫感は比較的少なめでワイドに広がります。サブベースのかなり低い所までしっかりと出力してくれます。低域のレスポンスがとても良くズシっと沈み込みつつももったりとした感じを残しません。量感はそれほど強くはありませんがどっしりとした存在感があり、曲の土台をしっかりと担ってくれていると感じました。強いて弱点を言うと最低域の輪郭がわずかに甘めに感じてしまう所ですかね。サブベースは追えるのに肝心の輪郭が掴めないもどかしさがありました。
【中域】
IE900との比較でよく言われるボーカル周りですが、やはりIE600の方が存在感をしっかりと感じられる鳴りです。透明感や瑞々しさが感じられ歯擦音や破裂音は刺さる少し手前でしっかりと制動されて出音されています。ドライとウェットの中間位のちょうど良いバランスでボーカルを正確に表現してくれます。男声、女声ボーカル問わずその声の魅力・息遣いを最大限に引き出し、かつ他の帯域と上手く中和させている印象を受けました。
【高域】
ハイハットやシンバル等の金物類がチキチキと小気味よく鳴ってくれます。最近のSennheiserの高級イヤホンは高域にクリスピーさというかメリハリを感じられるものが多い印象がありますね。しかしIE500proに比べると強調感は程よく抑えられています。味付けや強い残響感など余計なものは排してただただ真面目に入力された信号を出力している感じです。しかし暗さは無く抜けの良い明るい鳴りで音楽の爽快感に繋がっています。
【全体】
リスニング寄りな鳴り方でありながら音の質感は質実剛健で実に真面目です。しかし物足りなさは感じさせない絶妙な塩梅。1DDながら音の分離感に長けておりどの帯域にフォーカスしても音の粒を拾い上げる繊細さを持ち合わせています。分離感に長けているからといって各帯域の繋がりは非常にスムーズで聴き込む程に滑らかである事を再確認させられます。元気で明るい鳴りで一見ドンシャリと錯覚しますが帯域バランスとしては弱ドンシャリからフラットの中間位。繊細な音楽は非常に細やかに表現し迫力ある音楽は情熱的にダイナミックに表現してくれる懐の深さがあります。低域の広がりはあったものの音自体は割と近く感じたので音空間はそこそこの広さ。ライブハウス内の密度の高い音に包まれたい方に合っていると感じました。しかし密度はありつつも抜けの良い中高域が音楽に爽快感を感じさせてくれます。ボーカルがよく通る以外音の味付けが少な目なのでジャンルを選ばずに聴けるイヤホンだと思います。しかしながらボーカルが映えるイヤホンなので合わせるならボーカルメインの曲にしたいのが個人的な感想です。
総じて癖が無くサウンドバランスの良い非常に評価するのが難しいイヤホンでした。正直な所「良い音!終わり!」で1行で終わらせたかったんですがこうつらつらと書いてしまうのはレビュワーの性というか何というか。とにかく現代音楽をよく聴きハズレの無い1DD機種を探しているなら間違いなくトップ3には入ってくるであろう完成度の高いイヤホンです。最近のイヤホン価格のインフレに対して結構良心的ですしね。