物置小屋No.44二番館

イヤホン聴いたり、何かレビューしてみたり、他自分の備忘録

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【レビュー】AKG K3003 発売から10年以上経った今現在も色あせないサウンド

どうも。

今回はこちらのイヤホンを入手しましたのでレビューしていきたいと思います。

AKG K3003

自分調べですがこちらのイヤホン、発売から10年以上経っています…!イヤホンの10年以上と言えばもはや骨董品と言ってもおかしくないレベルのイヤホンですね。私も発売当初に試聴に行きその音の「格の違い」に思わず笑ってしまった思い出があります。あの頃は雲の上の存在でしたね…

発売当初は14万円前後と当時発売されたユニバーサルイヤホンの中では初とも言える最高額の弩級イヤホンだったのですが年月を経て中古相場が半額以下に落ち着いてきたのとeイヤホン店頭で良さげな出物があり試聴した所当時の感動そのままの音で(やっぱり良い音だなぁ…)と打ちのめされてしまったので思い切って購入してしまいました。

それでは本題に入っていきましょう。

【スペック】

  • ドライバー構成:ダイナミックドライバ(低域),BAドライバー(中高域2WAY)計3WAY
  • インピーダンス:8Ω
  • 周波数特性:10Hz-30kHz
  • 感度:104dB
  • ケーブル長:120cm

以前購入したDUNU DN-1000も搭載ドライバー数は同じでしたがDN-1000は自分調べでDDがフルレンジでBAドライバーが明確に2WAYの計3WAYと表記されていなかったんですよね。こちらは明確に3WAYと表記されており周波数特性も異なっておりK3003の方がレンジが広いです。


【使用感】

  • 感度:私の環境では若干音量を必要としました。所有機のR6 IIIで普段使いするイヤホン達がボリューム30~40になるのに対してこちらは45辺りで丁度良い塩梅。先日購入したKlipsch X10(ボリューム50前後)程ではありませんでした。
  • フィット感:SHURE掛けしない一般的な耳から下げるタイプのイヤホンで筐体も小振りなのでフィット感に関しては特に気になる点はありませんでしたが、長時間使用すると筐体後部の少し出っ張った部分が耳に当たり私の場合特に左耳が徐々に痛くなってくるのがネックでしたね。後SHURE掛けしないと歩行時に結構タッチノイズが目立つのでSHURE掛けする事で耳の痛みもノイズもかなり軽減出来ました。SHURE掛けし続けているとケーブルに癖が付いてしまいそうなので痛みが気になってきたらその都度切り替える運用をしています。こちらもSHURE掛けしない限りはイヤーピースを主体に本体を支える形になるのでイヤピ選びは重要です。私はこういったタイプのイヤホンはイヤピを少し小さ目にして装着しています。今回はfinalのEタイプのSサイズを使用しました。

  • ケーブル:プラグから分岐部分までは布巻ケーブルでそれ以降は若干チープですがツルっとした質感のビニル製の皮膜となっています。布巻部分はそれ程巻き癖は残りませんがビニル製部分は癖が付きやすい様に感じました。特にSHURE掛けで運用していると徐々に耳に沿う様な形に癖が付いてくるので定期的に耳から下げての運用も挟まないといけないですね。SHURE掛けする際はイヤホン左右を入れ替えて装着する事でケーブルが邪魔にならず装着する事が出来ます。
  • メンテ:断線予防の為にハウジングを周る様にケーブルが沿っているので一部出っ張っていますがステム部分は大きな凹凸の無い造りなためクリーニングは簡単な部類です。音導管は埃侵入防止用のフィルターが付いている為、耳垢等の除去も楽かと思われます。

  • その他:純正ケースは皮革製で小洒落た雰囲気がありますがイヤホンを定位置に置いて巻いて巻いて収納するので少し手間なのが難点ですね。どうしてもハウジングに傷を付けたくない方にはこちらも良いかと思いますが私は結構なズボラなので普段使っているハードケースに収納しようと思います。

【音質について】

※上の表は音の量感を表したグラフで、高いほど高音質と言う訳ではないのでご注意下さい。環境はHiby R6III直接続です。またK3003の音質調整フィルターはREFERENCEです。

【低域】

ベースの芯がしっかりしつつも左右への広がりが感じられるのがミソ。それによって土台がしっかりとしている事で音空間も相応に広く感じます。沈み込みももったりさを感じさせないレベルに程々に、特に鼓膜へ届く瞬発力・レスポンスに優れており低音の押し出しや重量感ははっきりとしていますが圧迫感はそれ程感じさせず聴き心地はとてもすっきり。すっきりながらDDの存在感は健在で他の帯域を邪魔する事無く太く弾力あるベースを楽しむ事が出来ます。ベースが映える曲ではしっかりと迫力と余韻を感じられますし逆にボーカルやメロディが映える曲であれば低域はサポートに回り、邪魔する事無く土台を担ってくれる。曲によってその人の聴きたい音に合わせてマルチに器用に合わせてくれる低域は中々出会えないタイプ。

【中域】

このイヤホンの魅力的なポイントの一つと言えるのが繊細で鮮やかなボーカル、歯擦音や破裂音は耳に刺さる寸前というか私の耳には若干刺さる位まで遠慮なく出てきます。REFERENCEフィルターの時点でこれだけ元気に軽快に鳴るとHIGH BOOSTフィルターにしたらすぐに聴き疲れしてしまいますね。メロディもとても明るく聴こえ、透明感や爽やかさを感じられる鳴り。かといって味付けされているかと言われるとそうでもない、ドライとウェットの中間で音源そのままを出力するナチュラルな印象を受けました。あえて弱点を言うと繊細で鮮やかである分、音が少し細めでボーカルの厚みや肉感に若干欠ける面がある事でしょうか。

【高域】

カリッと粒立ち良く繊細にチューニングされたドライな鳴りの金物類が音の閉塞感を取っ払ってくれます。こちらも中域同様耳障りになってしまう手前で上手くコントロールされており、中域に比べると曲のバランスを崩さないレベルであえて少し控えめに鳴らして調和をとっている印象を受けました。とにかく味付けは少な目で語弊を招くのでこう言うのは余り個人的に余り好きでは無いんですが原音そのままをありのまま鳴らしていると思いました。あえて言うならREFERENCEフィルターでは強調された突き抜ける様な高域好きには物足りなく感じてしまいそうですがREFERENCEは音全体のバランス、纏まりに優れている印象を受けました。

【全体】

ビビッドながら聴き続ける事でその中の本来のナチュラルさに気付かせてくれるタイプのイヤホンでしょうか。全帯域遠慮なく高解像で明瞭、そして前へ前へ出てくるので結果的にリスニング系フラットに近いバランスの様にも思えます。ハイブリッド型黎明期の機種ですがこれ程の完成度を10年以上前に達成していた事に改めて驚かされます。現行のDAP等上流の高品質化による恩恵も大きいと考えられます。黎明期のハイブリッドながら音のちぐはぐさは全く感じさせず聴き心地も素晴らしい帯域の繋がりに違和感がほぼ無く一つの音として鮮烈ながら纏まって聴こえるのは流石。カリッカリにチューニングされコントロールされた低中高の美味しい所を余すことなく聴かせてくれるイヤホンは今でも中々見つけられるものではありません。強いて弱点というと音の密度が少な目で若干バラつきを感じる点もありますが、逆に捉えると分離感の良さやすっきりとした聴き心地、音空間の広さに繋がっているとも受け取れます。低域がしっかりと土台を担っているので音に安定感があり聴き心地スッキリしていますが痩せた感じは感じさせません。音楽を分析的に聴く事も出来ますし肩の力を抜いて音のシャワーに浸る事も出来るマルチな用途に活躍出来るポテンシャルは今も尚健在です。スローテンポなバラードからハイテンポな現代音楽、どのジャンルを改めて聴いても新鮮さを感じられるのはAKGの音作りへの拘りがひしひしと感じられるイヤホンだと感じました。イヤホンによっては曲によってやけに音の広がりが狭く感じたり違和感を覚える事があったりするのですがこのK3003ではそれが殆ど感じられませんでした。

【DUNU DN-1000との比較】過去レビューリンク

一聴して分かるのが音の緻密さや明瞭さはK3003が圧倒的という事ですね。DN-1000では粗さがあった中高域がK3003では淀みなく上までスッと伸びていきますし低域は下までズンと響いてくれます。雰囲気は近いものを感じますが一音一音のハッキリした感じはDN-1000ではとても及ばないものがありました。DN-1000が元のドライバーの素性をそのままイヤホン筐体に詰め込んでとりあえず鳴らしてみた印象でK3003は計算された上で完全に音をコントロールして余すことなく出力してくれている印象を受けました。DN-1000も価格を考えると決して悪いものでは無く逆にコスパ良い一品なのですがどうしても空間表現の上手さや爽快感で壁を感じてしまいました。


総じて年代を感じさせない爽やかで鮮やかなサウンドを体感させてくれるこのイヤホンには感服させられてしまいました。いやぁeイヤホン店舗で実試聴する事が出来て良かったと思わされます。

強いて言えばこのK3003はリケーブルの出来ないイヤホンですので断線の時の対応をどうするかがネックですね。TwitterでMMCXにデタッチャブル化してくれるサービスがある事を見掛けたのでもしもの時が来た時はお世話になろうと思っています。このイヤホン始めリケーブル非対応のイヤホンはバランス化で更に化けるとの情報も耳にしているのでいつかの楽しみにとっておきたいと思います。

今は新品では入手する事が出来なくなってしまったK3003ですが発売から10年以上経った今でも十二分に今のハイエンドオーディオ好きな方の好みに刺さるであろうポテンシャルを秘めているイヤホンですね。皆さんも良い中古品が出品されましたら是非eイヤの店舗とかで試聴してみて下さい。