物置小屋No.44二番館

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【レビュー】Klipsch X10 シルキーでマイルドなシングルBA名機

どうも。

今回はこちらのイヤホンを入手しましたのでレビューしていきたいと思います。

Klipsch X10

Image X10もしくはX10を初めて聴いたのは学生の頃、友人が所持していたのを聴かせてもらったのが最初で最後でした。オレンジ色のコンパクトな筐体に見合わないふくよかで上質な音が非常に印象に残っていました。それ以降後継機のX11なども聴いたりしましたが他のイヤホンに目移りしたりそんなこんなしている内に当シリーズは生産完了となってしまいました。それから幾年月、手持ちイヤホンのレギュラーが決まってきてあとちょっとお遊びで使えるものは無いかと探している所、程度の良い中古品を入手するに至りました。

ちなみにこのX10はImage X10の復刻版との事。プラグ部分の形状がストレートタイプになった事以外は大きな変更は無いみたいです。

それでは本題に入っていきましょう。

【スペック】

  • ドライバー構成:1BAフルレンジ
  • インピーダンス:50Ω
  • 周波数特性:5Hz-19kHz
  • 感度:110dB
  • ケーブル長:125cm

ドライバーは当イヤホンに向けて専用開発されたBAドライバー「Full Range KG 926」を搭載しています。総重量も10gと非常に軽量。


【使用感】

  • 感度:他の手持ちBAのみの機種に比べて音量をとります。所有機のR6IIIで前述の機種らがボリューム30~40に対してX10は50程で同等に感じられる音量になりました。
  • フィット感:一般的なイヤーピースは円形ですがKlipsch製イヤホンは特有のもので楕円形や両甲に近い形状となっています。外耳の形は単純な円では無いためより人間工学的で合理的な形状という事みたいですね。イヤホン本体の形状が柿の種のように細長いのでイヤーピース選びが重要です。小さ目のイヤーピースで耳奥に挿入すると快適なフィット感が得られました。重量が非常に軽いので自重でずり下がってきたりする事もありません。
  • ケーブル:ビニル製のようなツルっとした質感で高級感は余りありません。ケーブル自体の弾力は余りなく巻いて収納するのには苦戦しませんね。巻き癖はそれほど付かない印象です。タッチノイズが大きいためSHURE掛けする事で軽減出来ますがそもそもイヤホン本体が細長く耳から多少はみ出てしまう為、SHURE掛けには余り向かないイヤホンです。どうしても気になる場合はマグネット内蔵のケーブルクリップ等でシャツに留めたりした方が良いでしょう。
  • メンテ:ハウジングはステム部分以外は凹凸の無い造りのため手入れはし易いです。音導管には埃侵入防止用のフィルターが付いていない為、耳垢等が引っ掛かってしまった際はピンセットやクリーニングツール等で掻き出しましょう。

【音質について】

※上の表は音の量感を表したグラフで、高いほど高音質と言う訳ではないのでご注意下さい。環境はHiby R6III直接続です。

【低域】

柔らかくとてもマイルドな低域です。量感はシングルBAとは思えない程しっかりと感じられ、かつ圧迫感が無く左右にぶわっと広がっていくので音空間もそれなりに広く感じられました。聴き疲れとも無縁です。料理に例えると出汁のしっかり効いた汁物と言った感じでしょうか、味がしっかり感じられるのにクドくなくあっさりとしている具合です。音の輪郭や解像感は若干甘めなので再生環境によっては多少ボワつきを感じる方も居るかも知れません。

【中域】

強調感も癖も無くとても素直に鳴ってくれます。歯擦音も目立つ事なくドライとウェットの中間でボーカルに瑞々しさや爽やかさよりも肉感・生々しさを感じられます。男女関係なくボーカルの熱気や美味しい所をしっかり捉えて味付けせずに出音してくれている印象です。太さや熱さを感じられる音傾向ですが解像感は損なわれておらず、他帯域との滑らかな繋がり、調和している具合を楽しむ事が出来ます。

【高域】

量感自体は他帯域に比べると若干少なく感じますがフォーカスするとしっかりとシャリっとした金属感があり、丁寧に鳴っています。シンバルやハイハット等金物類は煌めく感じは少な目でドライな鳴り方。響き・残響感といったものも控えめな印象です。こちらも他の帯域と上手く調和されており角が取れたマイルドな聴き味ですね。高域の伸びを求める方は少し不満を抱く帯域かと思われます。

【全体】

シルクの肌触りの様な滑らかさとまったりとした鳴りを併せ持った印象を受けるマイルドな聴き心地のイヤホンです。バランスとしては低域を若干盛ったフラットからピラミッド寄りな聴感です。シングルBAのメリットとして各帯域の繋がりが滑らかなのが魅力の一つです。代わりにワイドレンジさは犠牲になってしまう事が多いのですがX10はそれを目立たせない絶妙なチューニングがなされていると感じました。高解像で明瞭な昨今の多BA機種は音を分析的に聴かせるものが多い印象ですがこちらは音楽的な聴かせ方のアプローチで音単体でなく音楽全体を楽しませてくれる仕上がりになっています。曲のジャンルとしては生音系や音数の少ないものやボーカルメイン、スローテンポなものがよく合う印象です。


明瞭で高解像、とにかくフラットなシングルBA機種を求めるならEtymoticのER4シリーズ、マイルドで低域の広がり豊かな音楽に浸りたいならこちらのX10と言った具合でしょうか。DD機種に慣れている方はX10の方が違和感は少ないかと思います。特定の帯域に意識し過ぎない事で前のめりでなく肩の力を抜いて音楽を楽しむ事を再認識させてくれるイヤホンだと感じました。

大人になってある程度収入が安定してきてから学生の頃憧れていた名機達を購入していくのは非常にノスタルジーで思い出深いですね。最近のイヤホン達にももちろん興味津々ですがこういった楽しみ方も一つのオーディオ好きのあり方だと思うこの頃です。